行動経済学とはなんだろうか? 読書メモ
やや気になっていた分野なので,以下の本でほんのさわりだけさわった。
- 従来の新古典派経済学
- しかしながら・・・
- 行動経済学や経済心理学の登場
- ベイズ・ルールは人間の感覚・認識と上手く整合しているか?
- ゲーム理論ーゲームのプレイヤーは極端に合理的になりうるのか?
- プロスペクト理論とはなにか?
- 標準的な動学モデル(人の消費傾向を時間の経過と共に表すモデル)は現実に即しているのか?
- 行動経済学の今後の立ち位置
従来の新古典派経済学
超合理的・超利己的・超自制的な人間を仮定する。それによってモデルの構築を容易にし,数学的な分析を可能にする。言い換えれば,数学という強力なツールを使うために扱いやすいモデルを構築する。また,それによって発生しうる個人の行動様式の現実との誤差は,経済全体として考えれば修正されうるだろうという考え。
しかしながら・・・
- 現実の人の行動様式を完全に捉えきれているとは言い難い
- モデルの簡便さと,現実の人間の詳細な実証はトレードオフである
そこのニーズに合わせて,人間の複雑な行動様式を説明しようとする新たなモデルが生まれる。
行動経済学や経済心理学の登場
従来の経済学では捉えきれていない人間の行動様式を,心理学や認知科学といった他の学問分野の研究結果を活用することによって,説明しようとする,説明能力を補強しようとする試み。
ベイズ・ルールは人間の感覚・認識と上手く整合しているか?
必ずしも一致していない(近道選び,少数の法則,ギャンブラーの過ち,バイアス,自信過剰,係留効果,認知的不協和)
ゲーム理論ーゲームのプレイヤーは極端に合理的になりうるのか?
- 現実には,人間は合理性や利益のみでは動かないだろう(限定合理性)
- 合理的な手段を考えるのにもコストがかかる(最適化コスト,堂々巡りの問題)
- 情報の非対称性による均衡の破綻(勝者の呪い)
- 少数の非合理的プレーヤーの存在がゲームを狂わせる(ノイズ・トレーダー・モデル,行動ファイナンス)
プロスペクト理論とはなにか?
従来の経済学において,不確実性下における人間の行動モデルは期待効用仮説で表されていた。しかしながら,期待効用仮説では説明できない状況が多い(アレのパラドックス)。プロスペクト理論とは,期待効用仮説に代わり得る,リスクがある中での人間の行動様式を表すモデル。
- 人は,同じ規模ならば利益よりも損失の方を重要視する(損失回避性)
- 実際にはわずかな可能性を,額面よりも大きく受け止める(確率ウェート関数)
- 様々な応用例(現状バイアス,大穴バイアス,過剰な保険加入,選挙との関連)
- 先払い,定額制,貯蓄場所によるお金の消費の変化など,合理性と心理の関連(心の家計簿)
標準的な動学モデル(人の消費傾向を時間の経過と共に表すモデル)は現実に即しているのか?
- 必ずしも即していない(消費者は,途中で計画を変更することのない超自制的な人間として仮定される)
- 時間の経過と共に人の好みは代わりうる(選好の逆転)
- (指数的割引モデル→双極的割引モデル)
- さらなる説明要素(限定合理性,習慣形成,本能の作用)
行動経済学の今後の立ち位置
人間の行動様式を複雑なモデルで構成するということは,説明能力を強化することが出来るのと同時に,数学的に扱いにくくなるということにもつながる。すなわち,現実の詳細な記述とモデルの簡潔さはトレードオフであるということ。
それゆえに,行動経済学の登場によって従来の経済学の立場がゆらぐということはなく,むしろ古典的な経済モデルと心理学的な人間の振る舞いとのせめぎ合いから,どれだけ正確で扱いやすいモデルを構築することができるのかという挑戦になる。