モノを作るためには何を知ればいいのか?
モノにはさまざまな種類がある。ただそこにあるだけのもの。何かしらの用途として使えるもの。形を変えるもの,変えないもの。外からのエネルギーを受けて何かしらの目的を達成するようなもの。
ここでは,最後のいわゆる機械について考える。つまり,機械をつくるためにはどういった知識が必要か?ということについて考えてみる。
機械とは,産業革命以後世界中に広まっていった,何かしらのエネルギーを受けて,そのエネルギーを目的の仕事をするために使うモノである。(身の回りでは,電気エネルギーを受けているのがほとんどだろう)
現代社会は機械無くしてはもはや成立しない。電気を血液として,日常生活はなにからなにまで機械で彩られている。
機械は,さまざまな材料を組み合わせて作られる。機械について理解するには,機械の材料,機械の運動の振る舞い,機械のエネルギー,機械の電子,電気回路,コンピュータ制御などについて知ることが必要だろう。
- 材料について知る(材料力学)
- 材料の動きについて知る(機械力学)
- 熱について知る(熱力学)
- 気体や液体の振る舞いを知る(流体力学)
- 電気について知る(電気・電子工学)
- コンピュータの仕組みについて知る(情報工学)
- それで,結局必要となる根本的な知識
材料について知る(材料力学)
現実世界で,モノを作るには材料が必要だ。何を作るかによって選ぶ材料は異なってくる。
当然ながらそのときに,材料に関する知識が必要になってくる。それは材料の強度だったり,熱に対してどの程度強いのかだったり,力をかけた時にどれくらいたわむのか,電気を通すのか通さないのか,だったりする。
作るものが個人的なものかつ小規模ならば,材料の様子なんてだいたいの勘で分かるから良いよ,となるかもしれないが,非常に大規模な構造物,少しでも歪んだら困ってしまうようなモノ,生産過程で多くの人が関わっているようなモノを,勘で作ってしまってもし壊れたとしたら・・・。
失敗しちゃった⭐︎では済まされないだろう。
そのような理由から,高度なモノを作る上で,材料の細かい特性を知ることは非常に基本的かつ重要なこと。
そういった知識を扱うのが,いわゆる材料力学という学問だ。
材料の動きについて知る(機械力学)
材料については,材料力学で扱った。残りは機械の運動,エネルギー,そして電子・電気回路,コンピュータだ。ここでは,そういった材料同士,もしくは材料と外界との相互作用,つまり機械の運動の振る舞いについて知る。
機械の運動の振る舞いについて知ることは,物体の運動の様子を知ることと同じであり,つまるところ力学の問題である。
例えば,モータで動く,自動車のタイヤについて考えてみよう。
道路を走る自動車を作ろうとすれば,道路を走る自動車を支えるためのタイヤの構造について考えなければならない。そのときには,支える自動車の重さだけでなく,路面との摩擦や振動も考慮しなければいけない。
振動を考慮しなければ,車体が揺れに揺れまくって乗り心地はサイアクだろうし,摩擦を考慮しなければ,すぐにブチ壊れてしまうだろう。
実際に,自動車のタイヤにはサスペンションと呼ばれる,衝撃を吸収したり姿勢を制御するパーツが取り付けられているし,タイヤ自体も摩擦や振動を考慮してかなり複雑な構造をしている。
そういった状況を考察する時に必要なのが,高校で習ったような力学の問題だ。上の車の例で言えば,そのような状況を簡潔にモデルとして表すことで,おおまかな運動の振る舞いを知ることが出来る。
個々のパーツに焦点を当てて,もっと細かい状況を解析することも出来る。
このように,力学の,特に機械の運動の理解を目的として表すような知識の体系を機械力学という。
熱について知る(熱力学)
材料の特性について知ること,材料同士の動きの振る舞いについて知ることの重要性について把握した。
次は,熱についてである。モノが運動をしたり,エネルギーを変換するとき,熱というエネルギーの発生は避けられない。それは摩擦熱であったり,電気エネルギーを他のエネルギーに変換する時にどうしても発生する損失だったりする。
熱の振る舞い,熱エネルギーの扱いを心得なければ,せっかく緻密に材料を組み立てても,運動の振る舞いを把握して機械を作っても,熱によって材料が変形したり,溶けたりしてすぐにお釈迦になる可能性がある。
コンピュータにおける,熱によるパフォーマンスの低下も無視できない。
また,そもそも機械は熱エネルギーから出発している。1712年,イギリスのトマス・ニューコメンによる実用的な蒸気機関の発明から全てが始まったのである。
そのような熱の振る舞いについて調べる学問が,熱力学である。
気体や液体の振る舞いを知る(流体力学)
材料力学が,主に固体のモノの様子を知ることを目的としていたのに対して,気体や液体の様子,その振る舞いについて知ろうというのがここでの目的である。
そのような,いわゆる気体や液体のことをまとめて流体と呼び,流体の振る舞いについて調べる学問を流体力学という。
気体や液体が密接に関わり合っているような機械では,流体の振る舞いを知ることは重要になる。
例えば,自動車のエンジンは空気とガソリンを燃やし,高圧力を得ることで動力を生み出している。その振る舞いを理解するのに,流体に関する知識が不可欠なのは言うまでもないと思う。
すべての電気の生みの親,発電所でも流体の振る舞いをフル活用して電気を生み出している。新幹線やリニアモーターカー頭の形も,流体力学の賜物だし,ロケットを飛ばそうと考えるならば,エンジンの振る舞い,周りの空気抵抗などなどと,流体だらけの世界だ。
このように高度なモノづくりには,流体力学が欠かせない。
ここまでの,材料力学,機械力学,熱力学,流体力学は総称して4力学と呼ばれ,モノづくりの基本知識とされる。この4つを総称して,機械工学と呼ぶ。多くの大学の工学系のカリキュラムでは,基本的にこの4力学,すなわち機械工学を学ぶことになる。
電気について知る(電気・電子工学)
ここまで,機械の材料的な側面を中心に見てきた。しかしながら,高度なモノづくりをするために欠かせないものがある。それは電気の知識であり,電気回路,電子回路の知識である。
現代の多くのモノは,内部に電子基板があり,回路で動作を制御している。ゼンマイ仕掛けやばねだけで動く機械は,もはやとっても珍しいものではないだろうか。
例えばお手元のスマートフォン,パソコンには当然,電子回路が組み込まれている。いわゆる家電というものにもすべてだ。
そういった電子回路について知るには,根本となる電気の振る舞いについて知らなければならない。
電気の根本的な振る舞い,原理について扱う学問が,いわゆる電磁気学である。そこから,工学的,実用的な電気の取り扱い方をまとめた学問が電気工学や電子工学といった学問である。
電気工学と電子工学の大きな違いは,主に扱う電気への目的である。電気工学は発電所や大規模な機械などについて,エネルギーとしての電気の振る舞いを考える。反対に電子工学は,いわゆるコンピュータや電子回路などの,情報としての電気の扱いを調べるものだ。
こういうのは,工学の中のいわゆる電気・電子系の学科で専門的に学ぶことになる。
コンピュータの仕組みについて知る(情報工学)
さて,ここまでは全て機械の物理的なしくみを調べるものだった。しかし,現代で機械を扱う時には,コンピュータを扱うことは必須であると言ってもいいと思う。
電気の振る舞いについて調べ,電子回路のしくみについて知ることで,コンピュータのハードウェアとしての側面はおおよそ理解したと言ってもいいだろう。
しかしながら,コンピュータを扱うには,電子回路の仕組みだけでなく,その相互作用の結果として表れるソフトウェアの仕組みについても把握することは重要だ。
まあ,実際に扱うにあたって,ツールとしての使い方だけを知っていればよいという考え方もあるけど。
結局高度な機械を作るためには,コンピュータの様々なツールを活用しなければならないわけで,基本的な振る舞いを知っておくことは,新しいツールへの理解を早め,より上手く扱うことにも繋がるだろう。
例えば,流体の振る舞いについて調べる時には,手計算なんてとても無理で,コンピュータ上でシミュレーションをすることになる。また,材料に関しても,作りたいパーツをCADで設計することが一般的だ。
3Dゲームに始まり,VR, ARなどと,そもそも実体を持たないようなモノ作りだってある。ロボットを製作する時だって,はじめからすべて現実世界で作るのではなく,シミュレータ上で何度も試行錯誤を重ねて作られる。
いわゆるこういうのは,情報工学とかそういうところなのかな。
それで,結局必要となる根本的な知識
機械について,包括的に理解するにはさまざまな側面から観察し,理解することが必要だというのが分かったと思う。
では,結局のところこれらを学ぶのに根本的に必要となる共通の知識はなんなのだろう?
それは,
数学
でした。